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Interview: Suzy Menkes – Special: Fashion in Germany 5/7
16 February, 2010

『International Herald Tribune』の名物記者スージー・メンケスは、犀利な批評眼で知られる世界有数のファンションエディター。88年以来、年間約600のショーを見続けてきた彼女が、いま、新たに注目するのはドイツの首都、「ファッションの遺伝子をもつ町」ベルリンである。

Joachim Schirrmacher: メンケスさん、ヘラルドトリビューン紙が毎年主催する「ラグジュアリー(贅沢)会議」は、ファンション業界の有名人が一堂に会する重要イベントとなっています。パリやドバイ、イスタンブール、モスクワ、ニューデリーなどに続いて、09年末、初めてベルリンが会議の開催地に選ばれたのはなぜですか。

Suzy Menkes: 昨年の重点テーマは「テクノラグジュアリー」でしたから、「hard and smart」という言葉に要約されるような個性をほとばしらせるベルリンは、会議を開くのにまさに打ってつけの場所と思われました。ベルリンはリッチな町ではありませんが、「ラグジュアリー」というのは必ずしも、大金を払わなければ手に入らないものではないのです。むしろ会議で論じたかったのは、新しいラグジュアリーのあり方、その現在と未来に向けた定義づけでした。それから場所の選定に当たっては、ベルリンの人口構成も念頭にありました。ここには技術的な進歩に対して開かれたマインドをもつ大勢の若いひとたちが、世界中から集まっていますから。

ドイツと、そのファッションをどのようにとらえていらっしゃいますか。

デザイナーを吟味評価するとき、ドイツ人か、イタリア人か、フランス人かと区別して考えることはないですね。それでも、ドイツのモードについて強いて言うならば、超高級車を生産する国ということもあって、これまではメンズが主流という印象があったように思います。かといって、今後もそうあり続ける必然性はありません。

ファッションは、社会の自己表現手段だとお考えでしょうか。

だからこそ、私はファッションが面白くてたまらないのです。ファッションと社会の相関関係はとくに、過去の流行を振り返ってみるとよく分かります。例えば、いままた復活してきている80年代のビッグショルダー。ショルダーパッドは当時、男と文字通り“肩”を並べて働き始めた強い女の象徴でした。これは、ファッションが常に社会を映し出す鏡でもあることを、端的に示す例といえるでしょう。

ラグジュアリー会議に先立って、09年7月のファッションウィーク開催時にもベルリンを訪れたメンケスさんは、ショーを見るだけでなく、街に出て人々がどんな格好をしているか観察することを、とても重視されたそうですね。街頭こそ、ベルリンのファッションが生まれる場所であるということで。

ええ、もちろんです。ベルリンでは、ほぼすべての関心がストリートファッション、つまり個人的なスタイルに向けられていますからね。クロイツベルクのひとたちがどんな服装をしているか、どうやってアイテムを組み合わせているかを観察するのは、私にとって実にエキサイティングで刺激的な体験でした。そしてベルリンには優れた無名のデザイナーがたくさんいて、世界的な成功を収めるにはいたらないかもしれないけれど、間違いなく素晴らしい仕事をしていると確信しました。

ベルリンの街を歩いて、ほかにどんなことに気づかれましたか。

ベルリンといっても東側のことですが――これははっきり区別しておく必要があるので、お断りしておきます――、顕著だと思ったのは「show of clothes」的な現象がほとんど見られないことです。ブランドのロゴを誇示するようなそぶりも、皆無に近かったですし。若いベルリン子たちは、ビッグなブランド名を重視していないようでした。本当は気になるけれどお金がないからというなら、ニセモノを買えばいいわけですが、それもないところを見ると、ブランドやデザイナー名というものが、そもそも彼らの世界には組み込まれていない、ということなのだと思います。

三宅一生が01年、A-POCコレクションをベルリンのヴィトラ・デザイン美術館で披露したとき、ベルリンについての感想を、「ファッショナブルでないファッショナブルな町」という言葉で語っています。ベルリンはトレンディな町として注目を集めているけれど、ベルリン子はファッションをまったく重視してはいないと。状況はその間、変化したでしょうか。

それには何ともお答えしかねますが、もしかすると三宅氏が言おうとしたのは、ベルリンには典型的なファッションシーンがないということ、例えば若い女の子たちが、極めて流行に敏感な格好をしている東京とはわけが違う、ということではありませんか。でも、ファッションには多様な表現形態があり、アンチファッションもまたファッションである、というのが私の持論です。

ベルリンでもドイツ全体でも、いま何かにつけ人々の関心の的になっているのは、スポーツウェアやスポーツファッションです。ストリートファッション&カルチャーは、アディダスやプーマのデザインにも、若手ファッションデザイナーのコレクションにも、明らかに反映されています。

ええ、確かに。だから私たちの会議でも、プーマのヨッヘン・ツァイツ社長を招いてお話しを聞きました。スポーツウェアはいま、いくら強調しても足りないくらい重要になっています。そうしたなか、見本市「Bread & Butter」がベルリンに帰ってきたのは、この町が理想的なプラットフォームだからです。ファッションブログ用ストリート写真の被写体になるのを、近頃は喜んで引き受けるひとたちも結構いるのを見ると、彼らが自覚的にトレンドセッターたろうとしていることが分かります。それでも私は、プロのデザイナーたちの役目が終わることはないだろうと思っています。

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